円谷プロの裏側を書いた本『ウルトラマンが泣いている』

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ウルトラマンを生み出した円谷プロダクション。円谷一族で社長も務めた円谷英明氏の著書『ウルトラマンが泣いている』を読んだ。円谷プロの栄光とその後の滑落ぶりが、円谷プロ創業者一族の一員であった著者の視点から書かれていて中々に面白い。
といっても、あくまでも著者視点での話であるため、事実とは異なる部分もあるのかもしれない。つまりは円谷英明氏による暴露本。

概要

この本によると、円谷英二が創業した円谷プロがおかしくなり始めたのは三代目社長、円谷皐のころかららしい。といってもそれ以前からコスト意識が低かったり、優秀な人材を保持しなかったりなどの問題はあったようだ。いわゆる職人気質というものだろうか。
この円谷皐という人物は今の円谷商品には欠かせないキャラクタービジネスを発足させた人物であり、そういった意味では今の円谷の礎の一つを築いた人物だと言っていいと思う。ただ、問題は時間が経つにつれて会社、及び会社の金を私物化するようになったことにある。また、今のウルトラマンが抱える海外での権利問題に関しても多少関りがあるらしい。
その後、経営は皐氏の長男、一夫氏へと移るが、状況が好転したわけでもなく、ワンマン・放蕩経営を続けた結果悲惨な状況へと突入していく。会社としての財務管理もかなり適当だったらしい。

その後一夫氏は会長職へと追いやられ、経営は一夫氏の従兄であり、著者の兄でもある昌弘氏に経営権が移る。この時期に著者は専務として会社の財務状況を精査したようなのだが、あまりのひどさに苦労したそうだ。しかし、昌弘氏は社長になってからすぐセクハラ問題で訴えられることになり、著者である英明氏が社長に就任する。

そこからは英明氏が社長になってからの苦労と失敗や成功について書かれている。最終的に英明氏も社長の座から追いやられてしまい、その後一人挟んで社長の座に戻った一夫氏が結局円谷一族として最後の経営者となるようだ。

読んだ感想

読んだ感想としては「なるほど、そんなもんか。」という感じ。事情としては中小企業のワンマン経営には割とある形なんじゃないだろうか。ただ、この話はあくまでも一方の立場からの話なので、全てを鵜呑みにしない方がいいかもしれない。
初めて知るような内容もたくさんあったが、中でも平成シリーズもあまり利益がでなかったということには驚いた。シリーズが始まった時期、僕はすでに高校生ぐらいだったのでリアルタイムでちゃんと見たことはなかったのだけれど、何となく人気があったイメージをもっていた。だからこそ最近のシリーズでも、ちょくちょくダイナやコスモスが出てきているのだと思っていたし。でもこれ、よく考えたらただ俳優が使いやすいポジションにあるというだけなのかもしれない。

閑話休題。
僕は正直、円谷プロダクションに関してはあまり知識を持っていない(せいぜいがウルトラマンを生み出した会社ということぐらい)、本の内容が概ね事実だとしても一つだけ違和感があったのが昌弘氏のセクハラ問題のくだり。結構大きな事件だとは思うのだが、皐氏や一夫氏が円谷滑落の「戦犯」のように割と詳細に書かれているのにも関わらず、この部分は記述が少なく、さらっと終わっていたように思う。これが肉親の情によるものなのか、両氏への憎しみが強すぎたのか。
内輪で色々とあったんだろうとは思うが、この辺りはまさに「ウルトラマンが泣いている」
そういう意味で、このタイトルは的を射ていると思う。

よくよく考えたら僕が子供の頃、テレビでウルトラマンがリアルタイムで放映されていなかったような気がする。怪獣のソフビを見かけることが多かったので存在自体は知っていたと思うが、動いているのをちゃんと見たのは確か『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』だったと思う。例の権利問題でもめたタイのプロダクションとの合作映画だ。といってもこの映画、ほぼハヌマーンがメインでウルトラマンは少ししかでてこないけど。
それから昔のテレビシリーズをレンタルするようになって、徐々に詳しくなっていた。
生まれ育った家ではゴタゴタが起きていたのに、それでもキャラクターとしての魅力を持ち続けるというのは、やはりウルトラマンの持つポテンシャルによるものだろう。ウルトラマンだけでなくバルタン星人やゴモラ、ゼットンなど怪獣たちも最近の作品で度々登場し、活躍している。ウルトラマンのように、昔の敵役がいまだ現役な作品はあまり見かけない。
キャラクタービジネスは継続していかなければ利益を上げ続けることができないが、続けるには多くの困難が伴う。すでに一度失敗し、空白期間を持ってしまったウルトラマン、大変だとは思うけれど、これからは途切れることなく新しい作品を生み出していってほしい。

ただ、最近のシリーズは武器や変身アイテムなどの関連グッズが多すぎて親が泣きそうなので、その辺は配慮してもらいたい。