付き合う相手を選ぶということ

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自分が専門学校を出て、初めて入った会社にとてもできる先輩がいた。
できるといっても、突出して仕事ができたわけでもない。事実、働きぶりだけを見れば、彼よりも仕事ができる人間というのは他にもいた。
ただ、彼が他の人と違ったのは、常に前向きで、現状に満足することなくいつもどうすればもっと良くなるのか?ということを考えていたことだ。現状に満足することを良しとせず、毎週行われていた全体ミーティングでは、なにかしらの提案を行っていた。
もちろん、全ての改善策が上手くいったわけではないし、どちらかというと失敗した方が多かったと思う。
ある日のミーティングで、彼は自分の提案について、別の人から「それ上手くいくと思う?」と問いかけられたことがある。彼の返答は「分かりません。上手くいかないかもしれませんが、それがやらない理由にはならないと思います。」だった。
彼の提案の中には、厳しいものもあったので、一部の従業員から反感を買っていたし、社長もうんざりしていたのかもしれない。多分、彼もそんな空気に気づいていたように思う。

何か行動を起こすとき、常に失敗することを想像して、最初の一歩を踏み出せない自分のような人間に、彼はとっても輝いて見えた。
年は離れていたし、仕事で直接かかわることは少なかったので、あまり親しくはしていなかったが、帰る方向が同じだったため、飲みに誘ってくれたことが何回かあった。彼はお酒が入っても愚痴をこぼすことなく、何かについて、会社のことであったり、趣味のことだったり、いつも熱く語っていた。
ある飲みの席で彼に、
「どうしてあんなに提案できるんですか?失敗することを想像したり、怖くなったりしませんか?もし、失敗して自分の評価が下がったらどうしようとか、考えたりしますか?」
と、聞いたことがある。
彼は
「失敗したらどうしようって考えるし、不安もある。だから、提案するときはいつも成功した時のことだけ想像している。それでも実際に失敗したら落ち込むし、嫌になる。ただ、現状に慣れてしまうと、変化を恐れるようになってしまうから、そうならないためにも誰かが声をあげないと。最初のころは周りの評価も気になった。失敗したことだけを見れば、良くないかもしれないけど、大きく見れば意見を言ってない人より、言った人の方が評価がいいと思うから」
というものだった。
どうすればそんなに前向きになれるのかを聞くと、
「付き合う相手を選ぶことかな。同じ場所で同じメンバーとずっと一緒にいると、どうしても発言力のある人の価値観が集団の価値観になって、それが個人の価値観になってしまうから。そうならないためにも、色々な場に顔をだして、価値観が固まってしまわないようにしてる。自分が経験しないようなことを経験している人の話を聞くと、自分が今いるコミュニティの狭さが実感できるよ。」
との答えが返ってきた。

しばらくして、彼はより大きな会社に転職に、自分も1年後ぐらいに別の会社に移った。
それからその会社がどうなったのかは分からないが、しばらくWEBサイトの更新が止まった後に無くなっていたので、潰れたんじゃないかと思う。

彼とは特に連絡もとっていないけれど、価値観が固まってしまわないよう、受け身になってしまわないように勉強会などに顔をだすようにはなった。相変わらず豆腐メンタルのままで、前向きにはなれていないけど、物事を客観的に見れるようにはなったと思う。
ただ、特定の人、集団と深く付き合うこともなくなったので、友達は減った。