少年ジャンプを卒業した日

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数あるマンガ雑誌の中で、おそらく最も人気がある週刊少年ジャンプ。 出版不況と言われる中、ジャンプの発行部数自体も減少傾向にあるようだけれど、ライバル誌であるマガジンやサンデーと比べるとジャンプはかなり健闘している。 かつてはドラゴンボール、幽遊白書、スラムダンクといった人気コンテンツを排出し、現在もワンピースといった有名コンテンツを要している。他にも現在連載中のマンガが立て続けにアニメ化や舞台化しており、相変わらず人気の高さを感じる。 僕もそんなジャンプのファンで、30年弱ほぼ毎週購入していたのだが、2019年、元号が変わるタイミングでジャンプを卒業することにした。

少年ジャンプと出会った時のことは正直あまり覚えていない。ただ、読むようになったきっかけがドラゴンボールだったことは覚えている。最初はドラゴンボールしか読まなかったけれど、そこから徐々に他のマンガも読むようになった。 ただ、小学生が毎週ジャンプを買えるようなお小遣いをもらっているわけもないので、仲の良かった友達数人とお金を出し合って一冊購入して回し読みしていた。お金が足りなくて、公園や駅に誰かが読み終わったジャンプが捨てていないかみんなで探し回ったこともある。途中でジャンプではなく大人向け雑誌の収集に夢中になったS君を除き、それぞれジャンプを買うのに十分なお小遣いをもらえるようになっても、お金を出し合ってジャンプを読み合う関係は続いた。今ではその時の誰とも連絡をとっていないし、SNSでも繋がっていないけれど、僕にとっては子どものころの思い出とジャンプは密接につながっている。 当時は練習すればかめはめ波を出せると本気で思っていたし、雨の日は傘で友達とアバンストラッシュを打ち合っていた。小学校高学年になって、現実にできることできないことの区別がつけられるようになっても、牙突ならまだできそうだと思っていた。 高校生になっても相変わらず友達とジャンプを回し読みする日々を過ごし、ジャンプがきっかけで仲良くなった子だっている。 社会に出てからはさすがに周りの人とジャンプのマンガについて話すことは無くなったけれど、ジャンプは買い続けた。休みが終わって憂鬱な月曜日も、ジャンプの発売日だと思ったら憂鬱ではなくなった。多分死ぬまでジャンプを買い続けるんだろうなと思っていた。

違和感を感じ始めたのは30才を過ぎてからだったと思う。それまでは読み飛ばすことなく全ての連載作品に目を通していたし、巻末の作者コメントも欠かさずチェックしていた。しかし、段々と読むのが苦痛になるマンガがでてきて、気がついたそういったマンガはきちんと読まずにページを捲るだけになっていた。 全体の三分の一ぐらいの作品を読まなくなった頃、当時の連載作品の中で一番好きだったNARUTOの連載が終わった。思えばこの時から惰性でジャンプを買っていたんだと思う。今でもワンピースを筆頭に、ブラッククローバーや鬼滅の刃、ハイキュー、僕のヒーローアカデミアなど面白い作品が連載されている。それらの作品は読んでいて面白いし、楽しい。けれど、それとは裏腹にページを捲るたびに感じていたワクワク感は減っていった。 そんな時、ジャンプの情報を発信していたテレビ東京系の番組『ジャンポリス』が2019年の3月で終了した。といっても、僕はジャンポリスを欠かさずにチェックしていたわけじゃない。子どもがその前に放送されているルトラマンやアニメを見ているので、その延長線上で見ているだけに過ぎず、それもここ1年ぐらいの話だ。 2019年に入ってからはほとんど見ておらず、久々に見た回がたまたま最終回だった。最終回だと言われた時は驚いたけれど、ジャンプを取り扱った一つのコンテンツの終了と、それまで僕が漠然と感じていた何かが上手く重なった気がして、意外なほどにあっさりと自分もジャンプを卒業することに決めた。ただ、その何かがどういったものだったのかは、未だに言葉で上手く説明することができない。

よく、昔のジャンプと今のジャンプを比べて昔の方が良かったなどの意見を聞くが、僕はあまりそう思っていない。ジャンプがアンケート至上主義なのは良く知られたことだし、連載中の作品はそういう意味で今のターゲット層にある程度支持されている作品だとも言える。わざわざアンケートを出さないライト読者層の意見も含めるとまた違った結果になるのかもしれないのが、その辺はジャンプ編集部にノウハウがあるんだと思う。

結局言いたいことは、僕の好みと現在のメインターゲット層の好みがずれてきているということ。まぁ、仕方がない。アラフォーだし。むしろ、この年までジャンプを買い続けている方が珍しいのかもしれない。 昔読んだことがある本か何かで物語の内容は忘れたけど、覚えているフレーズがある。それは、”大人になれるのは女性だけ。男には子どもか老人しかいない。”なのだけれど、とうとう僕も老人になったのかもしれない。