自分のケチくささにへこむ

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高校生の時から付き合いのある、車好きの友人と一緒にオートバックスに行った。車好きなのは友人だけであって、僕は車好きではない。嫌いでもないけれど。 何が違うのか分からないクロス数種類やどこに使うのか分からない電飾のようなものを物色する友人。ちなみに友人の車のインテリアはすでにいくつかのLEDランプによってキラキラしている。一体彼は車に何を求めているのか。特に見るものもないので、そんなことを考えながら後ろをついていく。店内を一通りまわったあと、買う予定だったものを選んでレジに並ぼうとする友人、その時、レジ前に置かれていたあるものを手にとって話しかけてきた。

「これ、知ってる?オートバックスの独自ブランドのティッシュ。箱じゃないけど、5個セットで199円。めっちゃ安ない?」 「へぇ、安いな。」 「そうやろ?買っておいたら?俺んとこはいつもこれやし。」 ここに来る前、家のティッシュのストックがそろそろ切れそうだという話をしたことを思い出す。もしかしたら彼はその話を覚えており、このティッシュを紹介するためにオートバックスに来たのではないか、とふと思った。友人が手に持ったかごの中には大量のカー用品が入っているけども。 いや、確かその話は、近所のドラッグストアが5箱198円で安売りしていたから丁度良かった、で終わったんじゃなかったか? わざわざ1円高い商品を紹介する友人、彼の意図が読めない。悩むふりをして手に持ったティッシュを眺める。どうやらこのティッシュは一箱に300枚(150組)入っているらしい。これが多いのか少ないのか?もしかしたら、いつも買っているティッシュより内容量が多いのかもしれない。普段なら使っているティッシュの内容量をネットで調べるところだが、すでにレジ前、そんな余裕はない。なぜこのタイミングなのか。せめてもっと前に教えてくれていたら、興味のない買い物に付き合っている間に調べることができたのに。 「どうしたん?絶対得やから買っておいた方がええと思うで。」 悩んでいる僕を見て、友人がそう声をかける。彼としては特に深い意味もなく、たまたまレジ前に積まれていたティッシュを見て、行きの車でしたティッシュの話を思い出しただけだろう。普段自分が得だと思っている分、知らず知らずのうちに勧める声にも熱が入っているのが分かる。だってそれは彼の口調が、どこに使うのか分からないLEDライトについて語っている時と同じ調子だったから。 でもさ、違うんだ。安いのは分かるけど、もっと安いのがあるって言ったじゃないか。だから僕はこう言いたかった。いや、近所のドラッグストアで安売りしていたから今はやめておく、と。 「そうやな、とりあえず1つだけ買っておこうかな。」 しかし、僕の口からは友達の提案を受け入れる言葉が出ていた。確かに、199円より、198円の方が安い、だけどその差はたったの1円。 考えてみてほしい、自分が良いと思って友人に熱く勧めているものがあるとする、それをたった1円の差で却下された時の気持ちを。きっと彼はこう思う。 (え、なんで?ティッシュが切れそうやって言ってたのに。安いし、絶対にオススメのやつやのに。もしかしたら、俺のオススメっていうのがあかんのかもしれん。) そしてドラッグストアの言葉で、 (そういえば、来る時にドラッグストアに安いやつがあるって話をしたかもしれん。あえて強調してくるあたり、遠まわしに忘れてたことに対して嫌味を言ってるんかも。) と考えてしまうかもしれない。 僕は彼にそんな思いをさせてまで、たった1円安いだけのティッシュを選べただろうか? もちろんこれは99%僕の妄想だ。だが、残りの1を無視することはできない。だから、僕が1円高いティッシュを買ったのも仕方がないことだ。それに量を比較するまではこのティッシュが高いと決まったわけじゃない。そう自分に言い聞かせながら、僕は214円(税込)を支払った。確か安売りのティッシュの方は税込みの価格だったはず。ただただ自分のケチくささが悲しくなる。

未だティッシュの内容量は確認できていない。世の中には知らないままでいたほうが幸せなこともある。

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