幽霊人名救助隊を読んだ

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内村浩平。広告代理店勤務。結婚4年目。
歓迎会で上司によるパワハラを受け、下ネタを披露することを強要させられる。
その後も上司、同僚による度重なるパワハラと激務により、精神の病にかかるがコネ入社のために会社をやめる決心がつかない。
自宅でガス自殺を図るも未遂終わる。しかし、ガスが充満した部屋でタバコに火をつけようとして引火。大火傷を負い病院に搬送される。

これは高野和明の「幽霊人名救助隊」の話の一部分です。
話を大まかにまとめると、自殺してしまった4人の幽霊が天国に行くために、49日の間に100人の人間を救わないといけない。つまり100人の自殺しようとしている人たちを思いとどまらせるために試行錯誤するというものです。メインの4人の主人公たちが生きていた年代やバックグラウンドもバラバラで、その掛け合いも面白いです。
ちなみに冒頭の内村浩平は登場人物ではありますが、主役ではありません。
読んでて驚いたのが、うつ病で自殺しようとしている人が結構でてくること。自殺しようしている人のほとんどがうつ病にかかっています。発刊されたのが2004年なので、もう10年ほど前になるのですが、その時からこういった精神疾患って結構認知されていましたっけ?認知はされていたかもしれないですが、企業がこういう病気に対する理解があったかどうかはよく思い出せません。個人的には、今でもこういった病気に理解がある企業の数は少ないと思っています。

さて、この本には、様々な理由で死のうとしている人がいます。
その生まれと育った環境から命というものの大切さを教えてもらえなかった人。
障害を持った子どもの将来を悲観している人。
一人の寂しさに耐えることができない人。
両親の離婚やいじめに悩まされている子ども。
妻に先立たれた老人。
多くの人が、心の奥にうつを抱えており、4人はその一つ一つに向き合って、解決しようと努力します。例えそれが悪人であったり、生きていても待っているのは辛い現実だけだったとしても。
出会った全ての人を救うという、彼らが出した結論に対して異論がなかったわけではありません。ただ、その考えが間違っているとも思いませんでしたし、自分が正しいとも思えませんでした。
ただ、生きていても辛い現実が待っているだけの人間に、それでも生きろ、自殺はいけないと言えるのは、主人公たちが自殺を経験した幽霊だからでしょうか。
他人が自殺しようとしている様を見て、自分の自殺も客観的に捉えることができる。そして、その選択が正しかったのかを改めて考える。彼らが自殺しようとしている人たちを助けようとしているのは、贖罪のためなのかもしれません。

自分がこの作者の著書を読んだのは「13階段」「ジェノサイド」「グレイヴディッガー」「6時間後に君は死ぬ」に続いて5作目なのですが(あくまで自分が読んだ順番です。発行順ではありません)、比較的ユーモアの多い作品だなと感じました。
物語も「自殺しようとしている人を救う」という軸に沿ってずっと続いていくので、淡々と読み続けることができます。