病理医と放射線技師(科医)、フラジャイルとラジエーションハウス

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医療漫画と聞いて僕が最初に思い浮かべる作品が、手塚治虫の「ブラックジャック」
他にはドラマが話題になった「医龍」や「JIN-仁-」、「Dr.コトー診療所」だろうか。少し毛色は違うが浦沢直樹の「MONSTER」も考えられる。医療は医療でも人間ではなく動物に対する医療を描いた「獣医ドリトル」や「ワイルドライフ」といった作品もある。
他にも医療漫画としてカテゴライズされている作品は多くあるが、医療漫画の象徴的な場面って何?と聞かれると、ほとんどの人は「手術シーン」を思い浮かべるのではないだろうか。

医療漫画=手術

こう連想する人も多いと思う。
「超絶技巧を持ったスーパー外科医がその超人的技術を宿した神の手と、天才的頭脳から生まれる閃きを駆使して多くの患者を絶望的な死の淵から救い出す。」というのが医療漫画で良くみる王道ストーリーだろう。
そして、主人公は外科医である場合が多い。

しかし、最近読んだ医療漫画、フラジャイルとラジエーションハウスは外科医ではなく病理医と放射線技師(科医)を主人公にして描かれた作品。


フラジャイル

この漫画はTOKIOの長瀬が主演でドラマ化されたので知っている人も多いと思う。
メインキャラクターは天才病理医である岸京一郎と新人病理医の宮崎智尋、臨床検査技師の森井久志の三人。一般の患者には馴染みのない病理科を舞台に、病理の鑑別、診断から人知れず患者を救っていくというストーリー。

そもそも「病理医」という存在を知らず、最初に読んだ時のイメージは「地味だし、なんか難しそう」というものだった。しかし、読み進めていくその印象が360度回ってさらに180度変わる。つまり、かっこいい。
確かに派手ではないけれど、支える存在としての病理医の重要性や苦悩がきちんと表現されていると思う。もちろん、実際の現場を知っているわけではないので、これは想像に過ぎないが。
なぜドラマが放映されている時にこの漫画の存在を知らなかったのだろうか、見ていなかったのが悔やまれる。続編が2018年1月に始まるみたいなので、それまでにレンタルして予習しておかなければ。


ラジエーションハウス

フラジャイルは病理医を扱った作品だったけれど、ラジエーションハウスが扱うのは「放射線技師(科医)」。
ちなみに、放射線技師と放射線科医は別物である。こういった書き方をしているのは、この漫画の主人公、五十嵐唯織(いおり)は医師免許も取得しているのにも関わらず、放射線技師として勤務している。放射線科医として働くこともできるのに、放射線技師として働くことにこだわっているのである。どちらかというと、優れた放射線技師になるために、医師免許を取ったという変わり者。
その理由は、幼馴染と小さい時に交わした約束(放射線技師になって、医者になった彼女を支える)を守っているから。純粋過ぎて色々とはき違えている。そんな純粋な主人公、医師免許を持っているだけあって、放射線技師としての能力もかなり高い。

幼馴染は主人公と同じ病院で放射線科医として働いているのだけれど、主人公のことに気付いていない。それどころか放射線技師を下に見ており、主人公にもきつくあたる。
しかし、主人公の能力の高さを徐々に認めてきており、態度も変化してきているので今後の展開に期待。

どちらの作品も主人公がその高いスキルを活かして、見落とされた病気を発見したりすることで患者を救っていくのがストーリーの基本の流れ。
そういった点では今までの王道医療漫画と大きな違いはないかもしれない。
けれど、病理医と放射線技師という、普段患者として接する機会があまりない人たちをメインに話が進むので新鮮な面白さがある。

医療現場は関係者でない限り馴染みのない業界だと思う。
そんな現場の裏側を知るためには本を読んで色々と想像するしかない。そんな想像の隙間を埋めるかもしれないこの2作品。読んでみてほしい。